こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
発酵食品は微生物によって美味しくなり、独特の風味がつくられます。
ヨーグルトや漬物、味噌など、私たちにとって身近で、健康に良いと言われている食品ばかりですよね。
たとえば、便秘改善のためにヨーグルトを活用する方や、健康維持のために味噌汁を毎日飲むという習慣の方も多いのではないでしょうか。
でも、なぜ発酵食品が健康に良いと言われるのか、気になったことはありませんか。
今回は、発酵食品が健康に良いと言われる理由について、詳しくご紹介したいと思います。
後半では「シンバイオティクス」の考えに基づいた食材の組み合わせ方や、体調に合わせたメニューについても考案していますので、発酵食品を活用して健康になりたいという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
発酵食品が健康に良い理由
①消化吸収しやすい
発酵食品は消化吸収しやすいことが、発酵食品が健康に良いと言われている理由のひとつです。
私たちの体の中では、栄養素は消化酵素によって分解され消化されます。
発酵食品では、微生物の働きによってタンパク質→アミノ酸、炭水化物→ブドウ糖と、栄養素がすでに細かくなっているため、消化吸収しやすい状態となっています。
例えば、「飲む点滴」とも言われる発酵食品の甘酒は、糀の力で栄養素が分解され、体に吸収されやすいブドウ糖やアミノ酸が多く含まれており、江戸時代の頃から体力の落ちやすい夏場によく飲まれていたというのは有名な話ですね。
②腸内環境改善による免疫力アップ
発酵食品は一般的に言われる善玉菌を多く含むため、整腸作用や腸内環境を改善する効果があります。
また、腸は老廃物の排出に関わるだけでなく、最大の免疫器官としても働き、健康維持に重要な場所とも言えるのです。
一般に、腸内環境は善玉菌と悪玉菌のバランスによって良くなったり悪くなったりします。
発酵食品に利用されている菌は、善玉菌である乳酸菌・麹菌(コウジカビ)・納豆菌・酵母菌・酢酸菌・ビフィズス菌など。
発酵食品が健康にいいと言われている理由は、発酵食品を食べることで腸内の善玉菌が増えて優位になり、悪玉菌が減るためです。腸内の良い菌と悪い菌のバランスが、良い方に傾くということですね。
③腸内環境が良くなることによるお通じ改善
腸内環境が良い方へ向かうと、お通じの状態も良くなります。
発酵食品に含まれる善玉菌を取り入れることで、腸内環境がより良くなり、便秘の予防になります。
また、お通じのよい習慣を続けると、体にたまった老廃物の排泄を助けることができるため、疲労物質がたまりにくい体にも近づきますよ。
腸内環境を改善するために有効なのが、近年、注目されているシンバイオティクスという考え方です。
シンバイオティクスとは
シンバイオティクスとは、生きた有用菌(=一般に言われる善玉菌)を取り入れるプロバイオティクスと、有用菌を育てる食材を取り入れるプレバイオティクスを組み合わせる方法です。
善玉菌のエサとなる栄養(オリゴ糖や食物繊維)を一緒に食べることで、腸内で善玉菌を効率よく増やすことができます。
たとえばビフィズス菌を摂りたい時は、ビフィズス菌×オリゴ糖という組み合わせにすると効果的です。
ビフィズス菌とビフィズス菌のエサになるオリゴ糖が含まれている食材を一緒に取り入れることで、腸内でビフィズス菌が増えやすくなります。
組み合わせ例
ビフィズス菌入りヨーグルト + はちみつ・バナナ・きなこ
ビフィズス菌はすべてのヨーグルトに含まれているわけではないので、ビフィズス菌を摂りたいときは、「ビフィズス菌入り」と記載されているものを選べるといいですね。
乳酸菌を摂りたい場合は、乳酸菌×水溶性食物繊維という組み合わせにすると効果的です。
組み合わせ例
キムチ・ぬか漬けなどの漬物 + オクラ・めかぶ・豆
チーズ + やまいも・きのこ
漬物類やチーズに豊富な乳酸菌は、水溶性食物繊維をエサにして増えますので、水溶性食物繊維が多く含まれるネバネバ食材や、海藻・豆類・キノコ類を一緒に摂ってくださいね。
シンバイオティクスの組み合わせは、献立レベルで実践しても大丈夫です。
たとえば、豚キムチや魚のぬか漬けなどの発酵食品を使ったメイン料理に、海藻サラダやデザートに果物を合わせるのもよいでしょう。
発酵食品の取り入れ方を目的別に紹介
体調やシーンに合わせて、発酵食品と他の食材を組み合わせてご紹介します。
消化の調子が悪いとき
お腹がゆるいなど消化の調子が悪い時は、低脂肪・高たんぱく質で油ひかえめなメニューがおすすめです。お腹がゆるくなりやすいオリゴ糖や水溶性食物繊維の多い食材は避けるのがベター。
あわせて味噌・甘酒・塩こうじなどの発酵食品を上手に使って消化を助けましょう。
たとえば、エネルギー源となる柔らかめに炊いた米飯に、低脂肪高たんぱくな納豆・白身魚・豆腐をメインにしてみてはいかがでしょうか。
副菜としてビタミンやミネラルが豊富なりんご・ほうれん草などを細かくして柔らかく煮たものや、ポタージュスープなどで消化吸収を高めたいですね。
回復してきたら乳酸菌やビフィズス菌が含まれているヨーグルトや漬物などを適宜取り入れて、腸内環境を整えていきましょう。
胃腸に負担をかける香辛料や冷たい飲み物も、消化が悪い時は控えてくださいね。
消化の調子が悪いときの、おすすめメニュー
- 白身魚の味噌煮込みうどん(味噌は煮込んでいる途中に半分入れて味をしみこませ、もう半分は最後に加えて加熱によるダメージを軽くします。薄めの味付けにしてください。)
- 味噌入りポタージュスープ(栄養たっぷりで優しい味のポタージュスープは、隠し味として最後に味噌を加えます。)
- ザワークラウト(キャベツには別名キャベジンと呼ばれているビタミンUが含まれ、胃痛・胸やけ・胃潰瘍予防効果があります。乳酸発酵によってできた酵素や植物性乳酸菌もとれるので消化の調子が悪い時にぴったりです。付け合わせや煮物にしましょう。)
- 甘酒(飲む点滴ともいわれ、ブドウ糖が吸収されやすいです。消化の負担になるアルコールは避けたいので、米麴(米糀)を麴菌によって糖化させてつくられるノンアルコールの甘酒をおすすめします。炊飯器でつくることもできますが、手軽な市販品を上手に活用してくださいね。)
- 塩こうじ(甘酒と同じ理由で、おすすめです。魚やお肉を塩こうじに漬けてから調理すると、たんぱく質が分解され柔らかくなりうま味もアップ。胃腸に優しいメインメニューとなりますよ)。
免疫力を高めたいとき
免疫力を高めたいときは、エネルギー源となる炭水化物を中心に、免疫力アップ効果のある発酵食品や食材を取り入れてみてください。
炭水化物食品は、腸内細菌のエサとなる食物繊維の供給源となり、なおかつ体を動かすエネルギー源、細胞が活動するエネルギー源にもなります。エネルギーやパワーが補える料理で、体も気持ちも元気になって免疫力を高めましょう。
冷え性予防や疲労回復効果のある食材と組み合わせれば、より体力がアップしそうですね。
免疫力を高めたいときの、おすすめメニュー
- 麦ごはんネバネバ丼(納豆に合わせて、おくら・めかぶ・やまいも・なめこの中からお好みで水溶性食物繊維をたっぷりとりましょう)
- ヨーグルトカレー(カレーライスは家庭料理の定番ですが、ヨーグルトを加えることで手軽に発酵メニューに変身します。バターチキンカレー、トマトカレー、ポークカレーなどに合いますよ。乳酸菌は熱に弱いため、最後にヨーグルトを加えましょう。)
- たこキムチやきそば(たこに豊富に含まれるタウリンは疲労回復効果があります。乳酸菌と食物繊維がとれるキムチと一緒に免疫力アップしましょう。ニラや玉ねぎ、椎茸などお好みで加えてください。)
- ぬか漬け・野沢菜チャーハン(乳酸菌が多く含まれる漬物ですが、単品ではあまり多く食べられず飽きてしまうことも。細かく刻んでチャーハンの具にすると、おいしくアレンジできます。)
- 他にも、にんにく味噌や柚子胡椒といった発酵食品も薬味として活用できます。また、梅干しは発酵食品ではありませんが、風邪予防や疲労回復効果、殺菌・抗菌効果があるため、発酵食品を使ったメニューに加えてみてくださいね。
お通じ改善
便秘改善のためには、発酵食品と一緒に水溶性食物繊維やオリゴ糖を摂ることで善玉菌が増えやすくなるので、それらを組み合わせることをおすすめします。
水溶性食物繊維は水に溶けて粘り気のある食物繊維で、海藻・きのこ・豆類に多く含まれます。
オリゴ糖は糖類の中でも大腸まで届くため、善玉菌のエサとなります。
ごぼう・玉ねぎ・バナナ・大豆・はちみつ・ねぎ・とうもろこし・アスパラガスなどに含まれています。
加えて、繊維質のある不溶性食物繊維も適宜取り入れれば、腸のぜんどう運動がより活発になりますよ。
また、普段からダイエットのために脂質を控えている場合は、便通をスムーズにするために必要な油も適量とるように意識してみてくださいね。
特に、オリーブオイルやアマニ油などの不飽和脂肪酸をおすすめします。
徐々に便秘が改善してきたら、引き続き発酵食品をこまめに取り入れて、お通じのよい習慣を続けましょう。
お通じ改善におすすめのメニュー
- 水溶性食物繊維豊富なキウイに、ビフィズス菌入りヨーグルト、オリゴ糖豊富なはちみつの組み合わせ。
- 納豆ご飯に根菜汁、ぬか漬け、焼き魚、おからの煮物、昆布と大豆の煮物といった和食メニューもお通じ改善におすすめです。
- かぼちゃのヨーグルトサラダ(ナッツ類やレーズン、クリームチーズを入れても)
- ラタトゥイユ(野菜がゴロゴロ入ったラタトゥイユで美味しく食物繊維を摂りましょう。不飽和脂肪酸であるオリーブオイルでコクがでます。)
- 野菜フルーツジュース(プルーン、ヨーグルト、悪玉菌に抗菌作用のある抹茶、豆乳、はちみつ、バナナ、きなこ、りんご、小松菜などを入れてみてください)
- 水溶性食物繊維が豊富な豆料理(チリビーンズ、サラダ)、ひじきの煮物などの海藻に、白菜漬け・キムチなどの乳酸菌が摂れる漬物をプラス
腸内の善玉菌は年齢が上がると共に少なくなると言われており、減った善玉菌を補うためには毎日こまめに生きた善玉菌を摂ることで腸内環境を良い方に維持できます。
発酵食品メニューで腸内環境が改善した後も、発酵食品と善玉菌のエサになる食材を一緒に摂る習慣を続けてみてくださいね。
また、発酵食品の種類や、発酵の仕組みについては、別の記事でもご紹介しています。
詳しく知りたい方は以下の記事もぜひご覧になってみてください。