こんにちは、管理栄養士・料理家の廣野沙織(ひろのさおり)です。
これまで「体に良い」と言われていたココナッツオイル。
しかし、先日ハーバード大学の教授が自身のレクチャーで、「ココナッツオイルは純粋な毒(pure poison)」と発言したことが話題になっています。
今回、このようにココナッツオイルの危険性が叫ばれた理由は、ココナッツオイルには「飽和脂肪酸」が多く含まれるためです。
一方で、これまで著名人をはじめとする多くの方にココナッツオイルが支持されてきたのは「中鎖脂肪酸」が多いからという理由でした。
「脂肪酸」って何?よく聞くけどあまり分かっていない、これを機に理解したい、という方のために、ここでは話題のココナッツオイルを中心に、あぶら(油脂)と脂肪酸について解説したいと思います。
あぶら(油脂)の構造と脂肪酸について
食品に含まれるあぶら(油脂)は、「グリセリン」に3つの「脂肪酸」がつながった構造をしています。
油脂の構造(イメージ図)
脂肪酸は、炭素がいくつも繋がった構造をしており、その中に炭素間の二重結合が有るか無いかで、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。
【脂肪酸】
<飽和脂肪酸(二重結合なし)>
<不飽和脂肪酸(二重結合あり)>
更に、飽和脂肪酸は炭素の数で分類されます。
不飽和脂肪酸は二重結合の数や、結合がどこに存在するかで次のように分類することができます。
【脂肪酸】
<飽和脂肪酸(二重結合なし)>
∟短鎖脂肪酸(炭素数7以下)
∟中鎖脂肪酸(炭素数8~12)
∟長鎖脂肪酸(炭素数13以上)
<不飽和脂肪酸(二重結合あり)>
∟一価不飽和脂肪酸
∟多価不飽和脂肪酸
∟オメガ3系
∟オメガ6系
ココナッツオイルは主に、二重結合のない「飽和脂肪酸」で出来ており、中でも炭素数8~12の「中鎖脂肪酸」が多いということでした。
それでは、それぞれの特徴を見てみましょう。
飽和脂肪酸の特徴
ラードやバター、肉などの動物性の食品に多く含まれており、常温で固まる性質があります。ココナッツオイルは植物性ですが、常温で固まっているのは飽和脂肪酸が多いため。
飽和脂肪酸を取りすぎると、血中の悪玉コレステロールが増加し、動脈硬化性疾患(脳卒中や心筋梗塞など)の原因となると言われています。
飽和脂肪酸は総エネルギーの7%以下に抑えることが目安です*。
*日本人の食事摂取基準(2015年度版),厚生労働省
中鎖脂肪酸の特徴
中鎖脂肪酸はココナッツやパームフルーツなどに多く含まれており、MCTオイルとも呼ばれています。
中鎖脂肪酸は高鎖脂肪酸と代謝経路が異なり、エネルギー源として利用されるスピードが速いという特徴があります。そのため、「体脂肪として蓄積されにくく、太りにくい油」と言われているのです。
しかし、油は油。他の油と同様に、1gあたり9kcalのエネルギーをもっています。
そのため、中鎖脂肪酸で活動に必要なエネルギーを十分に補うと、糖質やタンパク質といった他のエネルギー源が使えずに余ってしまいます。エネルギーとして使えずに余った糖質・タンパク質は、代謝経路で形を変えていき、結果的に体脂肪として蓄えられてしまうのです。
「体脂肪として蓄積されにくく、太りにくい油」というのは、それ自体はそうかもしれませんが、さまざまな栄養素が存在する食事全体を考えると、あまり適切な表現ではありませんね。
一方で、【すぐに使えるエネルギーを補給したい場合】や、【病気などで糖質やタンパク質が制限されており、生命活動に使いやすいエネルギーを補給する場合】には、中鎖脂肪酸が適した脂肪酸であることは間違いありません。
ココナッツオイルの摂り過ぎには注意
中鎖脂肪酸について知ると、ダイエットのためにココナッツオイルを使用することはあまり適していないことが分かるのではないでしょうか?
どの食品にも当てはまりますが、極端な量を摂ると体にはよくありません。ココナッツオイルには血液中のコレステロールを上昇させてしまう飽和脂肪酸が多く含まれているので、特に注意が必要です。
バターなど他の飽和脂肪酸と同様に、適度な量(総エネルギーの7%以下が目安※)を食事に取り入れていくことが大切、ということをぜひ覚えておいてください。
※一日に2000kcal摂る場合、15g(140kcal)程度。