こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
日本人の生活に欠かせない「緑茶」ですが、なんとなく健康に良いイメージがあったり、リラックス気分を味わえるような印象を持っている方は多いかもしれません。
緑茶にはカテキンという成分が含まれており、それが体に良い影響をもたらしたり殺菌作用などがあることは一般によく知られています。
実はその他にも緑茶には特徴的な栄養成分が含まれ、それぞれの働きによる健康効果が期待されていますよ。
今回は、緑茶に含まれる栄養成分や健康効果について詳しく解説します。
緑茶の健康効果と殺菌作用
一般に緑茶は健康に良いらしいことは古くから知られていましたが、近年、緑茶に含まれる成分が様々な作用を持つことが明らかになってきており、健康効果が期待されています。
緑茶に含まれる代表的な成分と、期待される健康効果についてご紹介します。
発がん抑制作用
緑茶にはポリフェノールの一種であるカテキンが含まれ、がんを予防したり進行を抑制する働きがあることが分かっています。
がんは細胞の突然変異により「がん化」が起こり、健康な細胞ががん細胞に変わってしまう病気ですが、カテキンにはこの「がん化」を抑制する働きがあると言われています。
さらにカテキンにはがん細胞が増えることを抑制する作用もあり、がんの予防だけでなく、進行を遅らせる効果も期待されていますよ。
ただし、緑茶はあくまでも食品であって、薬ではないという点は注意しておきましょう。
血中コレステロール抑制作用
緑茶に含まれるカテキンには食事中のコレステロール吸収を抑制し、血中コレステロールの上昇を抑制する作用があります。
血中コレステロールは高い状態が続くことで、動脈硬化や心筋梗塞・心筋症・脳梗塞などを引き起こす原因となります。
コレステロールの中でも一般に悪玉コレステロールと呼ばれているものが病気を引き起こし、体に良い働きをする善玉コレステロールとは区別されていますが、カテキンはコレステロールの中でも悪玉コレステロールを減少させるのに役立ちます。
血中コレステロールの正常な状態を維持するためには、卵やお肉などの動物性食品の取りすぎに注意し、野菜や海藻、大豆、魚などを取り入れる食事が効果的ですが、さらなる手助けとして、カテキンを含む緑茶を食事と一緒に取り入れるのも良いですね。
血圧上昇抑制作用
カテキンにはコレステロールだけでなく血圧の上昇を抑制する作用もあります。
血圧が高い状態が続くと、血管の壁が厚くなってしなやかさを失う動脈硬化が進行し、脳卒中や心疾患の原因となります。
血圧の上昇は、塩分の取りすぎや運動不足、飲酒、野菜や果物不足などで起こります。高血圧対策には薄味をこころがけ、野菜や果物を取り入れるのがおすすめですが、あわせて緑茶を取り入れるのも良いでしょう。
ただし緑茶には血圧を上昇させる作用があるカフェインも含まれますので、飲みすぎには注意してください。
リラックス効果
緑茶には、テアニンによるリラックス効果・抗ストレス効果があります。
アミノ酸の一種であるテアニンは緑茶のうま味や甘味に関係しており、リラックス効果だけでなく集中力を高めたり、抗ストレス効果もありますよ。
また、緑茶にはカフェインも含まれていますが、テアニンはカフェインの覚醒作用を穏やかにしてくれます。緑茶を飲むとほっとするのはテアニンの効果によるところが大きいようですね。
緊張状態から解放されリラックスすることによって自律神経が整うと、自律神経の乱れによって引き起こされていた過敏性腸症候群・頭痛・イライラなどの改善が期待できます。
アンチエイジングに役立つ抗酸化・抗糖化作用
緑茶に含まれるカテキンやケルセチンといったポリフェノール類には、抗酸化・抗糖化作用があります。
「糖化」とは、体内に存在しているたんぱく質と食事から吸収された糖質が結びつくことで、細胞や肌が老化する原因となる現象のことです。
食後の血糖値の急上昇によって糖化が進みますので、アンチエイジングには血糖値の急上昇を防ぐことが大切です。
緑茶に含まれるカテキンやケルセチンには、食後の血糖値の急上昇を抑制する作用があるため、糖化の防止やそれによるアンチエイジングに役立ちます。
糖質の多い食事には、緑茶を取り入れてみると良いでしょう。
また、ストレスや紫外線にさらされると、体内で活性酸素が生じて細胞が「酸化」します。
カテキンやケルセチンなどのポリフェノール類には、細胞を酸化から守ってくれる働きがあります。細胞の酸化は老化のひとつと言えますので、抗酸化作用のあるカテキンを含む緑茶を飲むことで、アンチエイジングの手助けになりそうですね。
さらに緑茶にはコラーゲンの生成に必要なビタミンCが多く含まれており、煎茶の抽出液100gあたり、6mgのビタミンCが含まれています1)。成人のビタミンC摂取推奨量は1日で100mg2)ですので、167mLの緑茶で一日の約1割のビタミンCが摂れる計算になりますよ。
カフェインの覚醒作用によって熟睡できなくなってしまうとアンチエイジングには逆効果ですので、常識の範囲で取り入れたいですね。
1) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
2) 日本人の食事摂取基準(2020年版)
カテキンによる抗菌作用
カテキンには抗菌作用があり、虫歯予防や口臭予防などの口腔ケアのほか、風邪予防としての効果が期待できます。
口腔ケアでは、口内細菌の繁殖を抑制・異臭を抑える働きや、フッ素による虫歯予防が期待されています。虫歯予防の効果を最大限に活かすには、食後に緑茶を飲むのがおすすめですよ。
また風邪予防には、カテキンはウイルスや細菌の細胞を破壊する働きがありますので、風邪予防やのどの痛み予防として、お茶でうがいをするのも良いでしょう。
喉の調子が良くない時や、風邪が流行っている時などに試してみてください。
カフェインの摂りすぎに注意
このように緑茶に含まれる成分には様々な健康効果が期待できますが、とはいっても多量に飲めば良いというものではありません。
緑茶に含まれる成分のうち、カフェイン、カテキン、シュウ酸は摂りすぎに注意したい成分です。
特にカフェインは摂りすぎによって睡眠障害やめまい、心拍数の増加、興奮、震え、下痢、吐き気など健康に被害をもたらします。
それではどれくらいの量であれば摂りすぎによる健康被害を防げるでしょうか。
緑茶の適量についてご紹介します。
緑茶の適量は?カフェイン上限量から計算すると…
緑茶の適量は個人差もあるため一概には言えませんが、カフェイン摂取量の目安から緑茶を飲む目安の上限量を計算することができます。
カナダ保険省(HC)によると、カフェイン摂取量の目安は
- 健康な成人の場合、1日あたり400mgまで
- 妊婦・授乳中・妊娠を予定している女性は1日あたり300mgまで
とされています。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、煎茶の浸出液ではカフェイン含有量は100gあたり20mgです。この数値をもとに健康な成人の場合の1日当たりの緑茶(煎茶)上限量を計算してみると、
- 湯のみ(150mL)の場合、1日あたり13杯まで
- 計量カップ(200mL)では、1日あたり10カップまで
- マグカップ(250mL)では、1日あたり8杯まで
が目安となります。
上記は煎茶での計算ですが、玉露の浸出液に含まれるカフェインは煎茶の8倍である160mgとなっています。そのため、玉露を飲む場合は1日250mLまでを目安にすると良いですよ。
またコーヒー100gあたりにはカフェインが60mg含まれますので、緑茶のカフェイン量はコーヒーの3分の1程度にあたります。コーヒーを1杯以上飲むと眠れなくなるというような人は、緑茶は2~3杯までを目安にしてみてください。
その他の飲み物に含まれるカフェイン量については農林水産省サイト「カフェインの過剰摂取について」にまとめられていますので参考にしてみてください。
カフェインの許容量には個人差があり、一日に5~6杯飲んでも大丈夫という方もいれば、1杯で眠れなくなるという方もいるでしょう。
夜に寝付けない、熟睡できない、飲んだ後にドキドキするなど、よくない影響があるようでしたらカフェインの摂り過ぎも考えられます。体調を見ながら適量を探せると良いですね。
最後に
緑茶に含まれる成分には様々な作用があり、健康効果が期待されています。カフェインなどの摂りすぎに気をつけながら、適量を取り入れたいですね。
ぜひ参考にしてみてください。