賞味期限と消費期限の違い、期限を決める方法「経時変化試験」とは

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こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
食品表示診断士として食品表示に関わるお仕事も行っております。

近年、インターネットの発達により、個人でも食品を販売しやすくなりました。

新たに食品を販売する場合、賞味期限や消費期限の決定方法について不安になられる方も多いのではないでしょうか。

賞味期限や消費期限は、消費者がおいしく安全に食べられることを保証する期限のことです。

おいしさや安全性を一般消費者が見た目で判断するのは難しく、食中毒などの重篤な症状を引き起こすことがないように、適切に期限を決めておくことが大切です。

今回は、賞味期限と消費期限の違いと、それらの決定方法についてご紹介しますので、参考にしてみてください。

賞味期限と消費期限の違い、期限表示について

容器包装に明記されている消費期限や賞味期限。
これら期限表示については、食品表示基準によって、原則としてすべての加工食品に期限表示が義務づけられています

賞味期限と消費期限は似ている言葉ですが、意味としては大きく異なります。

賞味期限と消費期限の違い

賞味期限とは

賞味期限は、比較的長い期間で保存可能な食品が、おいしく安全に食べられる期限のこと。

近年、食品ロスが問題となっており消費者への啓発という意味で、賞味期限の場合は「期限を過ぎたら直ちに有害となるわけではない」とされています。

消費期限とは

一方、消費期限は、比較的短い期間で保存可能な食品が、おいしく安全に食べられる期限のこと。

消費期限の場合は、腐敗や食中毒によるリスクが大きいため、期限を過ぎると食べない方がよいとされています。

●賞味期限…過ぎたらすぐに有害というわけではない(比較的長い期間 保存可能)
●消費期限…期限を過ぎたら食べない方がよい(比較的短い期間 保存可能)

期限表示は、加工食品に限らず一部の生鮮食品にも表示があります。

また、加工食品でもアイスクリームなど劣化が少ないものは、省略可能な品目となっています。

賞味期限と消費期限の決定方法

期限の決定方法は、それぞれの食品の特性にもよりますが、共通して言えるのは、科学的な根拠に基づいて行うということです。

期限決定の元となるデータや資料は保管し、消費者から説明を求められた際に客観的に説明できるようにしておきましょう。

期限の決定方法として、時間が経った時の変化を調査する「経時変化試験」をおこなうのが一般的です。
経時変化試験の流れとしては、以下になります。

経時変化試験の流れ

① 商品予定のサンプルを複数用意し、包装などは商品と同一条件にします。

② 製造日のものを標準品とし、変化の比較的少ない冷凍庫・冷蔵庫などに保管します。

③ 一方、標準品以外のサンプルは流通時と同じ保管条件に置き、定期的に検査結果を記録し、標準品と比較しましょう。

経時変化試験の検査項目としては、理化学検査、微生物検査、官能検査と大きく分けることができます。

  • 理化学検査…水分・塩分・pH(酸度)・Brix(糖度)・Aw(水分活性)・アルコール分・過酸化物価などを分析機器で分析します。
  • 微生物検査…汚染の指標である一般生菌、大腸菌群、大腸菌・芽胞菌の数を出します。
  • 官能検査…色・風味の変化を実際に人が評価します。

④ 検査結果により最大の日持ち期間が分かったら、安全性を考えて余裕を持たせて期限を設定します。

安全係数

目安となるのが「安全係数」で、厚生労働省および農林水産省による「食品期限表示の設定のためのガイドライン」には、以下のように記載されています。

食品の特性に応じ、設定された期限に対して1未満の係数(安全係数)をかけて、客観的な項目(指標)において得られた期限よりも短い期間を設定することが基本である。

食品期限表示の設定のためのガイドライン

安全係数は加工食品ではおおむね0.8で計算します。(メーカーによってはさらに余裕を持たせて0.6~の場合もあります。)

例えば、最大の日持ち期間が10ヶ月であれば、0.8を乗算して、最終的にラベル表示する期限は8ヶ月と設定できます。

経時変化試験の検査項目とそれぞれの期限決定のポイントについて具体的に見ていきましょう。

理化学検査における期限決定のポイント

水分・塩分・pH(酸度)・Brix(糖度)・Aw(水分活性)・アルコール分・過酸化物価などを分析機器で検査します。(それぞれ食品の特性によって分析項目は異なります)

サンプルを用意した製造日の時点で、標準品を検査しておき、経時的な変化をみていきます。

その際、各分析結果の上限と下限の範囲を決めて、規格についても決定しましょう。

規格・基準値については、それぞれの食品によって違ってきますが、研究結果や文献を参考にする、前例がある場合は類似商品を参考にします。

その場合も客観的な根拠となるように資料として保管してください。
清涼飲料水・食肉製品・乳および乳製品など、法によって基準が定められているものもあります。

根拠に基づいた規格・基準から外れた場合を期限決定の指標としましょう。

理化学試験での期限決定のポイント

  • 商品性を維持できる基準を外れる
  • 健康安全の面から基準を外れる(油の酸化など)
  • 菌を抑えるのを目標とした基準を外れる(塩分・Brixなど)

微生物検査における期限決定のポイント

微生物検査では、微生物汚染の指標となる一般生菌・大腸菌群に加えて食中毒菌も含まれる大腸菌・芽胞菌などについて検査します。

微生物検査は安全性に直結するため、期限を決定するうえで特に重要となってきます。

原料由来で可能性のある微生物に加えて、製造途中のコンタミネーション(混入)などが考えられる場合や、複数の商品を同一ラインで製造している場合など、汚染の可能性がある微生物は検査項目に加えるとよいでしょう。

食品内で微生物は時間が経つごとに増えていきますが、菌の数(=菌数)が一定数を超えると、腐敗が進み商品としての価値はなくなり、食中毒菌が増える可能性も高くなります。

微生物検査での期限決定のポイント

  • 菌数が一定の基準値を超える
  • 食中毒菌の有無

菌の規格基準に関しては、食品の特性によって異なりますが、前例がない場合は研究結果や文献を、すでに実績のある類似商品がある場合は類似商品を参考にして、微生物検査の規格を決定してください。

微生物検査に関しても、法により規格基準が定められているものがありますので、理化学検査と合わせて確認するとよいでしょう。

厚生労働省「食品別の規格基準について」

官能検査における期限決定のポイント

味や風味を人が実際に食べて判断することを、官能検査と呼びます。
見た目・甘味・塩味・うまみ・苦味・えぐみ・香りなどの項目を判定します。

たとえば、甘味について判定する場合、標準品を中央値として、強いか弱いかを5段階評価するなど、数値化することで味の変化を客観的に記録しやすくなります。

味覚は主観が多く入るため複数人で行うことが望ましく、試験の環境や試験者の状態を可能な限り一定することで、客観的な根拠のひとつとなると考えられています。

官能検査での期限決定のポイント

  • 見た目や風味の劣化
  • 商品性を維持できないとする判定が過半数の場合 など

理化学検査や微生物検査において安全性があったとしても、見た目や美味しさを優先して決定することがあります。

食品ロスの観点からは、安全性があれば多少の風味劣化は許容範囲内とすることが推奨されている風潮もあるため、メーカー側の判断によるところが大きいです。

既存製品を目安にすることも

賞味期限が一年以上の場合などは製品化前に試験を行うことは現実的ではありません。その場合は、根拠を明確にすることが大切です。

たとえば類似商品を目安にすることや、一定期間の限定した試験をおこなった場合も包装容器においてその後の安全性が保障できるような根拠があるなど、明確にしておきましょう。

またその場合は、製品化と平行して経時変化試験も続けておき、適宜、見直しをするのが望ましいです。

検査(試験)を依頼できる検査機関

期限決定のための検査を依頼できる検査機関もありますので、活用してみてください。

たとえば、食品衛生法上の登録検査機関として認定されている「食品分析センター」は期限の設定・理化学検査・微生物検査の他に、栄養成分の分析などにも対応しています。

日本食品分析センター 

この他に、食品衛生法上の登録検査機関は多数ありますので参考にしてみてください。

厚生労働省「登録検査機関で行うことのできる食品等の検査について」

まとめ

今回は、賞味期限と消費期限の違い、期限の決定方法についてご紹介しました。

期限表示は、食品表示基準によって、原則としてすべての加工食品に義務づけられています。

賞味期限は比較的長く、過ぎたらすぐに有害というわけではない期限のことで、消費期限は比較的短く、期限を過ぎたら食べない方がよい期限のことです。

賞味期限や消費期限は、理化学検査・微生物検査・官能検査によって、客観的根拠に基づいて決定されています。最大の日持ち期間に安全係数を乗算して余裕を持たせて期限を設定してください。

食品は時間とともに風味が劣化し、菌数が増えるのは当然のことではありますが、食品に求められるおいしさと安全性のためにも、適切に期限を決定したいですね。

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