こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
着色料や増粘剤などの「食品添加物」にはさまざまな種類があり、身近な食品に使用されているため、気になる方も多いのではないでしょうか。
容器包装された加工食品の食品表示ラベルには、原材料となる食品や栄養成分だけでなく、添加物に関しても決められたルールがあるんですよ。
特に、近年よく見かける「○○無添加」などといった無添加表示に関しては、2022年3月にガイドラインが発表され、2024年4月までに新たなルールへと移行します。
今回は、加工食品における食品添加物表示の基本的なルールと、「無添加表示の禁止」について詳しくご説明します。
表示ルールを知ることで、事業者は安心して正確な表示をつくれますし、消費者は表示に記載された情報を正しく読み取ることができますので、ぜひ参考にしてみてください。
食品添加物とは?食品との違い
食品の裏側などに記載されているラベルで、このような表示を見たことはありませんか?
上記の原材料表示のうち添加物は、「酸化防止剤(V.C)香料、着色料(青1)」と表示されている部分です。
キャンディの酸化を防ぐビタミンC、香りづけをする香料、色づけをする着色料が使われているという意味になります。
このように、特定の目的をもって使用されるのが、食品添加物です。
食品添加物が使われる目的は、
- 食品を製造しやすくする
- 食品の風味や外観をよくする
- 食品の保存性を高める
- 食品の栄養強化
など、さまざまです。
食品はそれ自体をそのまま食べられるものですが、食品添加物はそのまま食べるわけではなく、食品の見た目や日持ちをよくしたり、食品を作りやすくするなど、目的を持って使用されます。
食品添加物は大きく4種類あり、主に化学合成された「指定添加物」、天然由来で日本での長い食経験があるクチナシ色素やウコン抽出物などの「既存添加物」やバニラ香料などの「天然香料」があります。
また、「一般飲食物添加物」といって、一般に食品として食べられているものでも、目的をもって使用される場合は添加物に該当します。
たとえばオレンジ果汁を着色の目的で使用する場合、食品添加物として扱われます。
食品添加物の表示ルールについて
食品添加物の表示ルールでは、容器包装された加工食品において、原則として使用したすべての添加物を表示します。
その食品をつくる際に使用した添加物だけでなく、各原材料にもともと入っている添加物についても表示が必要です。
たとえば、クッキーを作るときにチョコレートを使用した場合、チョコレートにもともと入っている添加物についても表示します。
①原材料と明確に区別し、多い順に記載する
添加物は、ただ並べて表示すればいいというわけではありません。
食品と添加物は明確に区別して表示します。
たとえば、食品と食品添加物の間にスラッシュ「/」を記載することや、別に項目を作ることで、区別できるようにします。
こうして区別したうえで、添加物の中でも重量の多い順で記載します。
②添加物の名称についての個別ルール
食品添加物は、原則として物質名で表示しますが、個別にルールが定められているものもあります。
たとえば、「保存料(ソルビン酸K)」などが該当します。
保存料や甘味料など、情報として伝える必要性が高いものは、用途名と物質名を同時に表示します。
上の例では、保存料が用途名、ソルビン酸Kが物質名です。
用途名と物質名の併記が必要なものは、以下の通りです。
- 甘味料
- 着色料
- 保存料
- 増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料
- 酸化防止剤
- 発色剤
- 漂白剤
- 防かび剤又は防ばい剤
このように物質名だけだとわかりにくいものや消費者の関心が高いものは、物質名だけでなく使用目的も記載することで情報として伝えられるようになっています。
その他にも、
- 指定添加物・既存添加物・一般飲食物添加物は、名称(物質名)・別名・簡略名・種別名のうちいずれかで記載できる
- 天然香料では、例えばバニラ香料などのように、元となる物質名などに「香料」をつけて記載する
- 同じ種類の添加物を併用する場合、簡略化して表示することもできる
- かんすい、酸味料、香料など、一括名での表示が認められているものもある
など、いくつかの個別ルールがありますので、個々の表示基準に従ってください。
③添加物の表示が免除される場合
容器包装に入れられた加工食品でも、食品添加物の表示が免除される場合があります。
表示が免除されるのは、栄養強化・加工助剤・キャリーオーバーです。
栄養強化
栄養強化の目的で使用されるビタミン類・ミネラル類・アミノ酸類は表示が免除されます。
※ただし個別に表示義務があるものは表示が必要です。
加工助剤
製造途中で使われ、最終的に取り除かれるなどして食品中にほとんど残らない添加物を、加工助剤といいます。
食品の完成前に除去されたり、最終的に食品にもともと含まれる成分と同じになりその成分量を増加させるものではないものや、最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せずその食品に影響を与えないものが、加工助剤にあたります。
キャリーオーバー
キャリーオーバーになるのは、原材料に使用される添加物で、当該加工食品自体には使用されず添加物としての効果を発揮できない場合です。
たとえば、保存料を含むしょうゆで味付けしたせんべいでは、せんべいに対して保存料としての効果はないため、保存料はキャリーオーバーとなり、添加物であっても表示が免除されます。
一方、キャリーオーバーに該当しない例として、発色剤を使用したハムを入れたポテトサラダでは、ハムの原型をとどめており発色剤としての役割がポテトサラダ自体で発揮されるためキャリーオーバーではなく表示が必要となります。
このような栄養強化・加工助剤・キャリーオーバーのように、たとえ添加物が入っていても表示が免除されることがあるのです。
それでは、一部の表示が免除されたうえでほかに添加物を使用していない場合、「食品添加物無添加」と表示できるのでしょうか?
実は、無添加を強調して表示する場合は、表示が免除されている添加物も入っていないことが前提となります。
続いては、無添加表示のガイドラインについて詳しくお伝えします。
無添加表示の禁止について
2022年3月に、消費者庁より「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が出されました。
無添加とパッケージに大きく記載することで、無添加だから安全、無添加だから健康にいいという過剰なイメージが広まっているためです。
本来、添加物が入っていないという点だけでその食品が安全で健康にいいとは判断できず、原材料や賞味期限などを見て総合的に判断するものですよね。
また、実際のものよりも著しく優良であるとする「優良誤認」は、誇大広告などを取り締まる景品表示法で禁止されており、たとえばジュースの果汁成分が実際には60%なのに100%果汁と表示することはできません。
無添加表示に関しても、優良誤認にならないような注意はされていましたが、添加物の表示基準では細かく制定されておらず事業者に判断がゆだねられていたため、中には消費者が誤認してしまうような事例もあったようです。
このような経緯から、無添加表示について細かなガイドラインが示されました。
ガイドラインは無添加表示をすべて禁止しているわけではなく、消費者に誤認を与えないように事業者が自主的に点検するためのものです。
無添加表示に関して10の類型で例とともに示されたことで、細かい部分が明確になり、事業者も迷うことなく正確な判断ができるようになりますね。
また、消費者側はパッケージの目立つ部分で商品を選択する傾向であることが調査により分かったそうで、消費者は裏面の一括表示も積極的に活用できると、より良い判断ができるのではないでしょうか。
食品添加物の不使用表示に関するガイドラインの内容
「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」では、単なる「無添加」のみの記載はできない(類型1)とされています。
何を添加していないのか具体的に分からず、消費者が推察することになり誤認につながるためです。
「○○無添加」「着色料不使用」のように対象が明示されていれば表示できますが、ポイントがありますよ。
まず、既定のない「合成・化学・人口・天然」などのワードは一緒に記載できません(類型2)。
たとえば、「化学調味料不使用」「合成着色料無添加」「天然香料使用」などと記載できません。無添加や不使用と一緒に使われることで、添加物に対して実際よりも悪いイメージ・良いイメージを与えるおそれがあるためです。
また、使用できないと規定されている食品に、わざわざ○○不使用と記載することはできません(類型3)。
たとえば、清涼飲料水など食品によっては、使用できない添加物が決められているものもあります。それにも関わらず清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」と表示することはできません。
そして○○無添加・○○不使用と記載する際に気をつけたいのが、以下の点です。
同一機能・類似機能を持つ食品添加物・食品を使用した食品への無添加表示はできません(類型4・5)。たとえば保存料無添加と記載する場合、保存のためにほかの原材料を使用することがあってはいけません。
また、加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への無添加表示はできません(類型9)。加工助剤やキャリーオーバーに該当する添加物は表示が免除されますが、無添加を強調して表示する場合は、免除される添加物も含めて一切の添加物が入っていないことが前提となりますよ。
この他にも、ガイドラインでは例とともに記載があるので、気になる方は参考にしてみてください。
無添加表示の禁止は2024年4月から実施され、それまでは移行期間となります。
最後に
今回は、食品添加物表示の基本的なルールと「無添加表示の禁止」についてご説明しました。
食品添加物の表示ルールは細かくありますが、わかりやすい事例とともに規定されることで、事業者-消費者間で情報がより正しく伝わるのではないでしょうか。
ぜひ参考にしてみてください。