こんにちは、管理栄養士・料理家の廣野沙織(ひろのさおり)です。
干し椎茸には旨味があり、出汁の素材としてよく使われます。
旨味の成分は「グアニル酸」という成分です。これはもともと椎茸にたくさんあるのではなく、水戻し・調理中に酵素によって生成します。
ただ、椎茸にはグアニル酸を分解してしまう酵素も含まれているため、水戻し方法の違いで椎茸の旨味の引き出し方が変わってくるのです。
今回は、「椎茸のうま味の引き出す戻し方」についてご説明します。
旨味成分グアニル酸の生成と分解
椎茸に含まれるリボ核酸(RNA)は、ヌクレアーゼという酵素の働きによって、旨味成分「グアニル酸」に変化します。
さらに、「グアニル酸」はホスファターゼという酵素によって、旨味のもたない「グアノシン」に分解されてしまいます。
旨味成分を増やす酵素ヌクレアーゼが一番働くのは、50~70℃で、80℃以上で働かなくなります。
一方、旨味成分を分解する酵素ホスファターゼは40~60℃以上で働かなくなることが分かっています。
おすすめの水戻し方法
ある研究によると、5~60℃で椎茸の水戻しを行った場合、最も多くのグアニル酸が得られるのは、5℃(冷水)の水戻しなんだそうです。
(黒須泰行と岩黒大志,(2008), シイタケ中のグアニル酸に関する研究, 国際学院埼玉短期大学研究紀要)
つまり、水戻しする際にはなるべく低温にし、ホスファターゼが働くのを防ぐことが最終的に加熱した後の「旨味」を増やす上で非常に大事!ということですね。
さらに、5℃で水戻しをした際どれくらいの時間置いておけば良いのか、ということも調べられていました。
(黒須泰行と岩黒大志,(2008), シイタケ中のグアニル酸に関する研究, 国際学院埼玉短期大学研究紀要)
5時間と一晩の間に、有意な差はないという結果でした。
なので、無理をして一晩置く必要はなく、5時間以上置いておけば十分旨味を引き出すことに成功しているんです!
まとめ
椎茸には、旨味を生成する酵素と分解する酵素が両方存在します。水戻しの際になるべく旨味成分分解の酵素を働かせないことが、最終的に加熱した際にはとても大事なようです。
具体的には、5℃で5時間以上の水戻しです。
椎茸の出汁を取る際には、ぜひ冷蔵庫に入れて置いておきましょう!