こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
味噌汁に味噌を溶かし入れる時、一般的に最後に入れますが、なぜだかご存じですか?
また、味噌を加えてからの火加減が難しいと感じる方も多いかもしれません。
実は味噌を入れるのには適切なタイミングや温度があり、それによって味噌汁のおいしさが格段にアップするんですよ!
今回は、味噌汁の味噌を最後に入れる理由や、香り・旨味を最大限引き出すタイミングについて解説します。
味噌汁だけでなく味噌煮込みうどんや豚汁、味噌炒めなどの料理についても紹介しますので、あわせて参考にしてみてください。
味噌汁の味噌を最後に入れるのはなぜ?
香りを飛ばしすぎないようにするため
味噌汁を作る時、味噌を入れるタイミングを最後にするのは、ずばり香りを飛ばしすぎないようにするためです。
味噌の香りは発酵・熟成によって生じたアルコールに由来し、90度以上になると揮発してしまいます。
また味噌汁に限らず、料理に味噌を使う時は一般に最後に入れることとされていますね。例えば、味付けの順番を覚えるための語呂合わせである「料理のさしすせそ」でも味噌は最後の「そ」に当たります。
味噌は食べる直前のタイミングで加えることで、風味を損なわずに仕上げることができるんですよ。
味噌をとき入れた後の再加熱は必要?
味噌汁を作る際に味噌を溶き入れた後は、再度の加熱が必要です。
香りが逃げるのを防ぐためには、味噌を溶き入れた後は加熱しないほうがいいのでは?と思われるかもしれません。
しかし生の味噌に特有の若い香りを飛ばし、味噌の旨味を引き出すためにも味噌を溶き入れた後には再度加熱したほうが良いんですよ。
ただし前述のように加熱しすぎると良い香りが飛びすぎてしまうため、ぐつぐつと煮るのは味噌汁の仕上がりにとって良くありません。
味噌汁を加熱するほどに、味噌の香りの中でもむかっとするような不快臭が増えるということもわかっています1)。
味噌の香り・うま味を最大限引き出すために、加熱はしつつも煮沸しすぎない火加減とタイミングが大切なんですよ。
1) 菅原悦子,保坂由貴子, 固相マイクロ抽出法を用いた加熱による味噌汁のヘッドスペース成分変化の解析, 日本化成学会誌, 60, 545-542(2009)
味噌のおいしさを引き出す適切なタイミング「煮えばな」
味噌の香り・旨味を最大限引き出すためのタイミングを詳しくご説明します。
具材に火が通ったら、いったん火を止めて温度を下げてから味噌を溶き入れます。再度火にかけて旨味と香りを出し、鍋の底から気泡が湧き出る直前の、汁の表面がぐらっとゆれたタイミングで火を止めるようにしましょう。
このタイミングを「煮えばな」といい、味噌汁などを作る際、味噌を溶き入れた後に温める程度の目安になっています。
煮えばなでの再加熱が終わったら、すぐにお椀によそい、作りたてを食べるようにしましょう。
食べる直前まで香りが飛ばないように、お椀にふたをするのもおすすめですよ。
料理別、味噌を入れるタイミング
味噌汁以外にも、味噌を使った料理はたくさんあります。味噌煮込みうどんや根菜類を使用した味噌料理など、時間をかけて味をしみこませたい場合もありますよね。
一方で、味噌炒めなど短時間で味噌をからめたほうがおいしく仕上がる場合もあります。
味噌を入れる適切なタイミングについて料理別に解説します。
煮込みうどん・豚汁・根菜の味噌汁
煮込みうどんや豚汁、根菜の味噌汁は、具材にも味をしみこませたほうが味わい深く仕上がります。
味噌煮込みうどんの場合は、具材に火が通ったらうどんを入れ、分量の味噌をすべて入れてから煮込むと良いですよ。
一方、豚汁と根菜の味噌汁などの汁物は、味をしみこませつつ最後に香りを残すのがポイントです。
先に分量の半分の味噌を入れて煮て味をしみこませ、仕上げに残りの半分を入れて「煮えばな」のタイミングで火を止めましょう。
サバの味噌煮
味噌のマスキング作用がサバの臭みをうまく隠してくれるサバの味噌煮は、家庭料理の定番ですよね。
サバの味噌煮では煮ている最中に味をしみ込ませるため、最初から分量通りの味噌を入れて煮ましょう。
時間がある時は鍋を火からおろして一度冷ますことで、中まで味噌の味がしみ込んで臭みを感じにくくなりますよ。
味噌焼き
味噌焼きには、魚を味噌入りの調味料に漬け込んでから焼く「西京焼き」や、豚の味噌焼きなどがあります。
どちらも生の肉や魚にあらかじめ味噌をもみこんだり漬けたりしておくことで、材料に厚みがあっても中までしっかり味がしみこみます。
さらにこれを焼くことで、味噌のコクだけでなくメイラード反応による香ばしさも付与され満足感が増しますよ。
味噌炒め
味噌炒めは肉や野菜などの材料を炒めた後に、砂糖や酒などと味噌を合わせた調味料を入れてさっと炒める料理です。
一般的な野菜炒めを短時間の加熱で済ませる理由は、調味料を入れた後に炒め続けると野菜などから水分が出てベタついてしまうためです。
味噌炒めの場合も同様で、具材に火が通ったら味噌を加えて強火でさっと炒め、香ばしく仕上げると良いでしょう。
最後に
今回は、味噌汁の味噌を最後に入れる理由と、香り・旨味を最大限引き出すタイミングについてお伝えしました。
ぜひ参考にしてみてください。