焦げが体に悪いと言われる理由とその対策。アクリルアミドを増やさない調理方法

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こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。

加熱調理は、おいしさや食べやすさが増すだけでなく、栄養吸収しやすくなる、食中毒予防になるなど、多くのメリットがあります。

特に、焼く・揚げるなど、高温になる調理法では、食べ物が褐色に変化して見た目にもおいしそうになり、香ばしい風味が生み出されます。

しかし加熱しすぎた場合は、「焦げ」となって苦みが強くなり、見た目も黒くなってしまいます。

昔から“焦げは体に悪い”と言われていますし、あまりに焦げてしまったものは食べられないですよね。

今回は、焦げが体に悪いと言われている理由や、より安全に食べるための方法についてご紹介します。

焦げが体に悪いと言われる理由

焦げが体に悪いと言われる理由は、加熱のしすぎによって有害物質である「アクリルアミド」が生成されることに由来します。

アクリルアミドは発がん性が危ぶまれている化学物質で、高温になりやすい焼く・揚げるといった調理法で主に生成されます。

焼く・揚げるといった調理法では、様々な化学変化が起こっています。
特に、色や味に大きく影響するのが、メイラード反応です。

メイラード反応では、アミノ酸と糖が反応し、褐変物質であるメラノイジンが生成され、独特のおいしさが生まれます。

加熱しすぎると、メイラード反応が進みすぎることで色が黒くなって苦みが増え、さらに炭水化物が炭化し、この2つの反応によって見た目は焦げた状態になります。

一方、アクリルアミドもメイラード反応によって生成されますが、アクリルアミド自体は常温では無臭白色で、「焦げ」に関係するメラノイジンや炭とは異なる物質です。
※アクリルアミドができる仕組みについてはまだ完全には解明されていません。

しかし、焼き色(焦げの強さ)は加熱の程度の指標となりますよね。
実際に焼き色が強いほどアクリルアミドの生成量が多いという相関関係があります。

このような背景から、「焦げが体に悪い」と言われているのではないでしょうか。

アクリルアミドが生成される条件

アクリルアミドの生成もメイラード反応の一部ではあるとはいえ、すべてのメイラード反応でアクリルアミドが多く生成されるわけではありません。
アクリルアミドの生成量は、元となる成分の含有量によっても変わってきます。

アクリルアミドの元となる成分は、 

  • アミノ酸の一種であるアスパラギン
  • 還元糖のぶどう糖グルコース)や果糖フルクトース

と言われています。

また、アクリルアミドが生成されやすい温度は、120℃以上です。

焼く・揚げるといった調理法は120℃以上になるため、このような調理法で作られた食品にアクリルアミドが多く含まれていることがあるようです。

たとえば、これまでにアクリルアミドが多く含まれる報告があった食品として、

  • じゃがいもを揚げた食品…ポテトチップス、フライドポテト
  • 小麦を原料とする焼き菓子…ビスケットなど
  • コーヒー豆、ほうじ茶葉、煎り麦などの高温で焙煎した食品

などがあります。

食品中のアクリルアミド分析結果については厚生労働省の報告がありますので、気になる方は参考にしてみてください。

厚生労働省 食品中のアクリルアミド分析結果

アクリルアミドを増やさない工夫

アクリルアミドは普通の食品にも微量ながら含まれていますので、アクリルアミドの摂取量を完全にゼロにすることはできません

ですが、食品の保存や調理法などを工夫することで、アクリルアミドを摂取する割合を減らすことができますよ。

家庭でできる、アクリルアミドを増やさない方法についてご紹介します。

じゃがいもを冷蔵保存しない

じゃがいもを低温で長期保存すると、じゃがいも内の糖分が増えます。
アクリルアミドの元となる糖分が増えると、加熱したときにアクリルアミドが生成されやすくなります。

そのため、アクリルアミドを増やさないためには、じゃがいもは冷蔵庫ではなく、常温で保管することをおすすめします。

もし冷蔵庫に長期間入れていたじゃがいもがある場合は、煮る・蒸すなどの調理に活用すると良いですよ。
煮る・蒸す調理では、アクリルアミドはほとんど生成されず、増えた糖分によってじゃがいもの甘味が出て、おいしく仕上がるメリットがあります。

芋類は水にさらす

芋類は水にさらすと、でんぷんが溶け出しぬめりがとれますが、アクリルアミドの元になる糖分も溶けだします。
特に、アクリルアミドが生成されやすい焼く・揚げといった調理法の場合は、調理前に水にさらしてみてください。

水さらしは長時間おこなうと芋類独特のホクホク感が弱まってしまうため、5分程度を目安に行うとよいでしょう。

焼く・揚げるときは長時間の加熱を避ける

アクリルアミドは120℃以上の加熱で生成され、加熱時間が長いほど増加します。
そのため、焼く・揚げるなどのアクリルアミドが生成しやすい場合は、過度な加熱は避けましょう。

一方、煮る・蒸す・茹でるなどの調理法では、ほとんど生成されません。

しっかり火を通して食材を柔らかくしたい場合は、煮る・蒸す・茹でるなどの調理法にすると安心ですね。

焼き菓子は大きめサイズを切り分けるのがベター

焼き菓子は表面が焼けて茶色くなりますが、一人分で加熱されるものだと焼ける面積が広くなり、一食当たりのアクリルアミドは多くなってしまいます。

アクリルアミド対策として工夫したい場合は、大きめサイズの焼き菓子を切り分けるとよいでしょう。

さらに必要以上に砂糖を入れないようにして、焼きすぎないように気をつけたいですね。

調理法や食材のバランスを見直す

調理法や食材のバランスを見直すのもひとつの方法です。

普段から揚げ物などが多い場合は、煮る・蒸す・茹でるといった調理法も増やしてみてください。
調理に水を使うことで、水の沸騰温度である100℃を超えないため、アクリルアミドは生成されにくいですよ。

また、芋類が多いなど食材に偏りがある場合も、バランスをとってみてくださいね。

まとめ

焦げが体に悪いと言われている理由についてお伝えしました。

食品を加熱しすぎるとメイラード反応や炭化によって色が黒くなり、焦げになります。また、加熱しすぎることでアクリルアミドという有害物質が増加します。

アクリルアミドは、褐変物質メラノイジンや炭化によってできる焦げとは異なる物質ですが、焼き色が加熱の程度の指標となるため、焦げは体に悪いと言われているようです。

アクリルアミドは特に芋類を加熱することで増えやすいので、調理前に水にさらしたり、冷蔵保存を避けるなどして、アクリルアミドを減らす工夫ができるとよいですね。

また、調理法や食材が偏っている場合は、バランスも考えてみましょう。

参考

厚生労働省 加工食品中アクリルアミドに関するQ&A

農林水産省 アクリルアミドが含まれている食品

農林水産省 家庭調理でできること

食品安全委員会 加工食品中のアクリルアミドについて

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