こんにちは、管理栄養士・料理家の廣野沙織(ひろのさおり)です。
食べても食べても満足しないという時ありませんか?
【ストレスで食べ過ぎる】などもよく聞くフレーズですよね。ただ、「ストレスがあるからしょうがない」と開き直ってしまうと肥満まっしぐら!
なぜ食べ過ぎてしまうのか、しっかり原因を把握し改善に向けて状況を整えることが重要です。
満腹感とは?
脳の視床下部とよばれる部分は摂食の調節を担っており、いわば食欲をコントロールする場所です。
脳は様々なサインによって「満腹感」を感じますが、主なサインは①血糖値の上昇、②ホルモンやモノアミン、③胃の膨らみです。
血糖値の上昇
食事をすると、食べ物に含まれる糖類が分解・吸収されて血糖値が上昇します。
血糖上昇はだいたい15分~2時間後くらいまで持続しますが、この血糖上昇の刺激が視床下部に伝わると満腹感が生まれます。
ホルモンやモノアミン
血糖濃度が上昇すると膵臓からインスリンというホルモンが放出されますが、このインスリン自体に食欲を抑制する働きがあります。
インスリン以外のホルモンにも食欲に関わるものがあり、代表的なものでは、レプチン(食欲抑制)、グルココルチコイド(食欲促進)などです。
ホルモン以外に満腹感や空腹感に関わるものとしてモノアミンと呼ばれる物質があるので以下にまとめます。
- 【食欲増進】ノルアドレナリン、グルココルチコイド など
- 【食欲抑制】インスリン、セロトニン、ヒスタミン、ドーパミン、レプチン など
胃の膨らみ
脳は胃の膨らみによっても満腹感を感じます。
ですので血糖値上昇で満腹感が得られるからといって、糖質だけ摂ればよいのではありません。
たんぱく質は糖質に比べて約2倍程長く胃に滞在し、脂質はそれよりもさらに長く停滞することが知られています。つまり、これらの栄養素は胃に長く滞在することで満腹感に関与します。
また、野菜やキノコ類は、エネルギー(糖質やたんぱく質、脂質など)をそれほど含みませんが、かさがある分胃の中を満たしやすく、満腹感が得られやすい食品です。
軽くて甘い菓子パンを食べるよりも、具材たっぷりのスープに食パンを食べた方が物理的にお腹が満たされ、食べ物が胃に滞在する時間も長くなることで満腹感を得やすくなります。
ここまでのポイント
- 血糖値が上昇すると脳は満腹感を感じる。
- 体内のモノアミンやホルモンの中には、食欲促進、食欲抑制に寄与する物質がある。
- 胃が膨らむと脳は満腹感を感じる。食べ物のかさだけでなく、胃の滞在時間も重要。
満腹感が得られない理由
ではなぜ食欲がコントロールできなかったり、満腹感が得られないときがあるのでしょうか?満腹感を感じるメカニズムから、考えられる原因を挙げてみたいと思います。
原因①血糖上昇に問題がある
まず第一に、満腹感を生み出す血糖上昇に理由があるかもしれません。
糖そのものが少ない
糖になる炭水化物が少ない食事、極端な糖質制限はしていませんか?ご飯やパンなどの炭水化物を抜きがちな方は、食事をしても血糖値が上昇せず、なかなか満腹感は得られません。
食べ終わっても血糖値が上昇していない
食事が短時間の早食いだと、血糖が上昇する前に食事が終わってしまい、食後に満腹感を得られていない可能性があります。
よく噛まないことも原因のひとつです。食べ物の咀嚼をすると、唾液中のアミラーゼによって、ご飯などに含まれる「デンプン」は分解され、ブドウ糖(グルコース)になります。口の中であらかじめブドウ糖に分解されている場合、血糖値もすみやかに上がります[1]。
食後に満足感、満腹感を得るためには、ゆっくりと食事の時間をかけて食べる、よく噛むことが大切です。
原因②ストレス
ストレスは大脳皮質で認知されて視床下部へ伝わり、結果的にグルココルチコイドの分泌が高まることが知られています。
グルココルチコイドは、食欲促進に働くホルモンでしたね。
また、ストレスによって、食欲抑制に働くセロトニンが減少・機能低下することも、ストレスで食べ過ぎることに関わっていると考えられています。
原因③ボリューム(かさ)が少ない
菓子パンやスナック類など、軽くて高カロリーなものでは胃の膨らみが不十分で、エネルギー(カロリー)や糖質を摂っているのにもかかわらず満腹感が得られない、物足りない…。ということになります。
低カロリーでかさのある野菜類、キノコ類などは満腹感が得られやすい食品です。普段摂れているでしょうか?
満腹感を得られるようにするには
ストレスが原因かなと思う方は、まずはストレスを取り除いたり発散することで、根本的な問題を解決することが近道です。
それ以外に重要なのは「血糖値」と「胃の膨らみ」のコントロールです。
血糖値が上昇することで脳は満腹感を感じるようになるので、満腹感を得られるようにするには、
- 極端に炭水化物(糖質)が少ない食事を控える
- ゆっくり時間をかけて食べる
- よく噛む
- 野菜類やキノコ類などボリューム(かさ)のある食品を取り入れる
ぜひこれらを意識してみてください。
「満腹である」と感じるのは脳なので、脳にそう感じさせることが大切ですね。
食欲が上手く調整出来ていないときの参考にしてみてください。
参考
[1] 内田あや ら(2009)食事が血糖値に及ぼす影響 第2報-自由咀嚼摂取と強制咀嚼摂取の差―, 名古屋文理大学紀要
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