こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
「旨味」といえば、出汁(だし)に含まれるように、美味しい料理には欠かせない味。
旨味は基本五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)の一つです。旨味をもたらす成分には、グルタミン酸やイノシン酸、グアニル酸などがあります。
そんな旨味が、満腹感を増したり、摂取カロリーを抑える効果をもつ可能性があることをご存知でしたか?
旨味のある美味しい料理によってダイエットが上手くいくと考えると魔法のような話ですが・・・実際、どのくらいの効果が期待できるかご紹介したいと思います。
「旨味」が満腹感を増し、摂取カロリーを抑える可能性
旨味が満腹感やカロリー(エネルギー)摂取量に及ぼす影響について、いくつかの研究で調べられています。
ある実験[1]では、昼食の45分前に、旨味の主成分であるグルタミン酸ナトリウムとイノシン酸が入っているスープを飲んだ被験者は、それらが入っていないスープを飲んだ被験者に比べ、満腹感を感じやすくなり、昼食の摂取量が減りました。
また、別の研究[2]では、昼食後にグルタミン酸ナトリウムが添加されたスープを飲んだ被験者は、添加されていないスープを飲んだ被験者に比べ、その後自由に摂取したデザートの摂取カロリー量が有意に低下しました。
これらの研究結果として、旨味成分であるグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸を摂取することで、満腹感をもたらし、摂取カロリーを低減させる可能性があると考えられています。
しかし、いずれの研究も、平均して数十キロカロリーのカロリー低減効果であるため、実際に旨味だけで数キロの体脂肪を落としていくのは難しい話です。
また長期的なカロリー低減効果やダイエット効果については、いずれも検証されていません。
ただ、個人的には、それらの研究で明らかにされた「旨味が満腹感を増し、摂取カロリーを抑える可能性」があることを考えると、ダイエットをする際には、旨味を活かした料理を取り入れていくのは良い方法だと思います。
旨味を料理に取り入れるコツ
①汁物・煮物はだしを取る!「水だし」「だし酒」もおすすめ
汁物や煮物は、ひと手間かけてだしを取ることで、旨味成分をたっぷり摂ることができます。
和食料理であれば、昆布やかつお節、椎茸といった基本の出汁食材を使って、だしを取ってみましょう。
洋食であれば、お肉や野菜類を煮込んで作るスープストックもおすすめです。
だしを取るのが面倒、という方は、次に紹介する「水だし」や「だし酒」もおすすめです。
水だし
かつお節や昆布、にぼしなど、お好みの出汁食材と水を一緒にボトルに入れ、冷蔵庫で一晩保存します。旨味成分が水にゆっくり抽出され、繊細な風味のだし汁が出来上がります。
この「水だし」は、そのまま味噌汁や煮物に使うことができます。
だし酒
水と同様、料理酒に出汁食材を付けておく方法です。水よりもさらにゆっくり旨味成分が抽出されるので、冷蔵庫で一週間以上漬けておきましょう。
普段使っている料理酒を「だし酒」で置き換えたり、煮物に加える、酒蒸しに使うなどの活用ができます。
詳しい作り方などは、以前書いた記事をご覧ください。
②旨味食材を活用する。食材の組み合わせも重要
だしを取るより手軽な方法として、旨味成分を多く含む食材を活用するのもおすすめです。
グルタミン酸は野菜類、海藻類、発酵食品に含まれ、イノシン酸は肉類や魚類に豊富に含まれています。グアニル酸はきのこ類に含まれています。
グルタミン酸+イノシン酸、あるいは、グルタミン酸+グアニル酸といった組み合わせは、旨味が更に強くなる相乗効果があります。料理をする際にはそれらが組み合わさるように食材選びができると理想的です。
詳しくは過去の記事をご覧ください。
ダイエット中は旨味を活用した料理がおすすめ
旨味が満腹感を増し、摂取カロリーを抑える可能性がある、ということをご紹介しました。
その効果や、これまで検証されている内容については限定的であるものの、ダイエット中に旨味を活用することで、ダイエットに成功する可能性が高まるかもしれません。
また、だしを取る以外にも、手軽に旨味を取り入れる方法もいくつかご紹介しました。
ぜひ参考にしてみてください。
参考
[1] Masic, U. et al. (2014), Umami flavor enhances appetite but also increases satiety. The American Journal of Clinical Nutrition, 100, 532-538
[2] 今田ら(2009),食後のグルタミン酸ナトリウム摂取がデザートの摂取量に与える影響,日本味と匂学会誌,16,401-402