こんにちは、管理栄養士・料理家 ひろのさおりです。
食品表示診断士として食品表示に関わるお仕事も行っています。
食品表示は、情報を伝えるためにルールが決まっています。賞味期限や保管方法など、表示を読めば必要な情報が分かるようになっていますよね。
2015年~2020年にかけて表示のルールが大きく変わり、アレルギー表示もより分かりやすいものに変わっていますよ。
今回は、アレルギー表示が以前と変わった点、アレルギー表示の読み方やポイントについてご紹介します。
※記事執筆時点(2021年12月)における情報です。
※アレルギー症状のある方は、医師に相談した上で参考にしてみてください。
アレルギー表示が以前と変わった点
2015年4月1日に食品表示法が施行され、表示のルールが大きく変わりました。
移行期間として2020年3月末までは、旧表示と新表示どちらも許される期間がありましたが、現在は新しいルールで統一されています。
近年で変わった点は、
- 「特定加工食品」が廃止
- 一括表示の記載方法
- 21品目にアーモンドが追加
などです。詳しくご説明します。
アレルギー表示を省略できる「特定加工食品」が廃止
以前はマヨネーズやパン、うどん等は「特定加工食品」として、卵や小麦が入っているのが当たり前とみなされ、アレルギー表示を省略できました。
しかし現在は特定加工食品という呼び方自体がなくなり、マヨネーズやパン、うどん等にもアレルギー表示が義務づけられています。
理由は、マヨネーズに卵が入っていることを知らない例や、アレルギーの子供が誤って食べてしまうことも考えられるからです。
たとえば、以前はマヨネーズ、うどんという記載のみだったのが、現在は
マヨネーズ(卵を含む)
うどん(小麦を含む)
といったアレルギー表示がされるようになりました。
一括表示ルールの変更
アレルギー表示は原則として、原材料ごとに「(○○を含む)」と記載します。
たとえば、
パン(小麦を含む)、ハム(豚肉を含む)、マヨネーズ(卵・大豆を含む)
といったように原材料の直後にアレルゲンを含む食品を表示します。
これを「個別表示」と言います。
※添加物のアレルギー表示は、添加物の後に(○○由来)と記載されます。
表示スペースが小さく個別表示がむずかしい場合は、最後にまとめて記載する「一括表示」が許されています。
(原材料が多くかえって消費者にわかりにくい場合も一括表示が認められます。)
たとえば
卵、落花生、バター、ごま、砂糖、塩(一部に卵・落花生・乳成分・ごまを含む)
といったように、最後にまとめてアレルギー表示を記載します。
さらに、卵・落花生・ごまを()内に、バターの場合は”乳成分”とあらためて記載します。
このように、バターなどの「代替表記」や、卵や落花生などの「特定原材料等そのもの」も、一括表示では()内にあらためて記載することが義務づけられています。
※特定原材料等…アレルゲンを含む食品のうち表示が義務または推奨されているもの
※代替表記…特定原材料等を違う言葉で言い換えたもの等
以前、一括表示は「(原材料の一部に○○・××を含む)」という表記で、代替表記や特定原材料等そのものは、()内にあらためて記載しませんでした。
現在は、一括表示にあらためて記載することが義務となったため、以前と比べて見落としにくくなりました。
アレルギー表示の対象となっている食品についても、近年で変わった点があるのでご紹介します。
推奨表示の21品目にアーモンドが追加
アレルギー表示の対象となっている食品は、アレルギーの症例が増え、広く認知されるにつれて追加されてきました。
たとえばここ20年で、えび、かに、カシューナッツ、ごまが追加され、さらに2019年度、「特定原材料に準ずるもの」にアーモンドが追加されました。
ここで注意したいのが、アレルギー表示には義務と推奨があることです。
アレルゲンを含む食品のうち表示義務があるのは、
卵・乳・小麦・かに・えび・そば・落花生
の7品目で、これらを「特定原材料」と言います。
特定原材料は、発症数が多いものや重篤になりやすいものがあるため、必ず表示するよう決められています。
一方、表示が推奨されているのは、
あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、アーモンド
の21品目で「特定原材料に準ずるもの」と言います。
今回追加されたアーモンドはこれにあたり、表示が義務づけられているわけではありません。
そのため、場合によっては表示されていないこともあり注意が必要ですよ。
ここでひと息 <アレルギー表示の素朴な疑問>
企業によっては自主的に、アレルゲンを含む食品を表やイラストで目立つ場所に記載することがあります。
一見しただけで分かりやすいため、商品を選ぶときに便利ですよね。
このように食品表示の欄外にアレルギーの記載がある場合は、食品表示の欄には記載しなくてもよいのでしょうか?
実は、パッケージにアレルゲンを含む食品のイラスト等が入っているからといって、食品表示の欄内でアレルギー表示を省略することはできません。
ですので、もしパッケージのイラスト等を見落としても、食品表示をきちんと読めば、アレルゲンを確認できるようになっていますよ。
アレルギー表示を読み取るポイント
アレルゲンを含む食品は、隠し味など意外なものに含まれることがあるので、表示をくまなく読み取ることが大切です。
特に代替表記や拡大表記は、直後にアレルギーが記載されないため見落としやすいです。
表示を読み取るポイントをお伝えします。
代替表記と拡大表記のリストを覚えておく
アレルギーの個別表示がされないため見落としがちなのが、代替表記と拡大表記です。
代替表記とは、特定原材料等をひらがな・カタカナ・漢字など呼び方を変えた記載方法のことです。
たとえば代替表記では
えび→エビ、海老
かに→カニ、蟹
などのように、カタカナや漢字で表されるものの他、
卵→玉子、たまご、鶏卵、エッグ、あひる卵、うずら卵
乳→ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム
落花生→ピーナッツ
なども認められています。
一方、代替表記や特定原材料等が名称内に含まれているものを、拡大表記と言います。
たとえば拡大表記には、
えび→えび天ぷら、サクラエビ
かに→上海がに、マツバガニ、カニシューマイ
小麦→小麦粉、こむぎ胚芽
卵→厚焼玉子、ハムエッグ
乳→アイスミルク、ガーリックバター、プロセスチーズ、乳糖、乳たんぱく、生乳、牛乳、濃縮乳、加糖れん乳、調整粉乳
落花生→ピーナッツバター、ピーナッツクリーム
などがあります。
代替表記や拡大表記のリストがありますので、関係のあるものだけでも覚えておくと安心ですよ。
また、魚介類を原料にしているものは、特定原材料等が入っているか把握できないため、以下の6つは代替表記が認められています。参考にしてみてください。
たん白加水分解物(魚介類)、魚醤(魚介類)、魚醤パウダー(魚介類)、魚肉すり身(魚介類)、魚油(魚介類)、魚介エキス(魚介類)
不安な場合は店舗や製造者に問い合わせできる
アレルゲン表示が推奨のものは義務ではないため、必ずしもアレルゲンを含む食品が記載されるわけではありません。
また、推奨のものは、記載がない=入っていないということでもないので、難しいところですよね。
少しでも不安な点があれば、店舗や製造者に問い合わせて正確な情報を確認することができます。
製造者はアレルゲンに関する情報をもとめられた場合、正確な情報を提供することが推奨されていますよ。
他にもアレルギー表示の義務ではない場合をご紹介します。
コンタミネーション(=混入)の注意喚起表示
食品工場では、同じ製造ラインでアレルギーの原因となる特定原材料等をあつかっていることもあります。
たとえば、ピーナツ入りチョコレートの後に同一ラインでピーナツが入っていないチョコレートを製造する場合などです。
また、同じ工場内で使用している小麦粉などが舞って混入する、というようなこともあるかもしれません。
その場合は必ず入っているわけではないため、原材料表示に記載できません。
そのため、枠外に「本品製造工場では○○を含む製品を生産しています」といった注意喚起表示が推奨されています。
注意喚起表示は義務ではないため、不安な場合は製造者に問い合わせできます。
アレルギー表示が免除される場合
また、アレルギー表示が免除される場合もあります。
- 総たんぱく質量が数μg/mL、数μg/gに満たない場合(アレルギー症状は誘発しないであろうとの専門家の判断によって免除されている)
- 酒類
- 運搬容器に表示がされている場合(通い箱、ラベルレス飲料など)
- 製造加工してその場で注文に応じて直接販売する場合(総菜の対面販売、デパートの地下食品売り場など)
- 設備を設けて飲食させる場合(レストランなどの飲食店)
飲食店や対面販売などは、直接お店の人に聞くことができるのが理由になっています。
このように、表示が免除されている場合でも店舗や製造者に問い合わせすることができますよ。
表示をその都度チェックする習慣をつける
初めて取り入れる食品の場合は特に表示をよくチェックしますよね。ですが、食べ慣れた食品はどうでしょうか。
加工食品は突然、原材料が変わることがあります。ですので、慣れている食品の表示についても、その都度チェックする習慣をつけましょう。
さいごに
アレルギー表示が変わった点と読み方のポイントをお伝えしました。
アレルギー表示は難解な部分もありますが、以前と比べるとルールが統一され分かりやすくなっていますよ。
アレルギー表示について知ることで、食品の選択肢が増え、アレルゲンを含む食品を誤って食べてしまう誤食を少しでも防げるといいですね。
ぜひ参考にしてみてください。